我々の予想に反して、深耕の際に岩盤にぶつかることはほどんどありませんでした。しかし30センチよりも深く耕すことが出来ない箇所もいくつかありました。そのようなところではブドウの生長も難しくなるでしょう。また、ブドウ棚用の柱を立てるにも、深く入らないのでコンクリートを打たなければならなそうです。
幸いなことに畑のほとんどの部分には、少なくとも60センチの深さの土壌厚があります。土には石が多く含まれていますが、30年にわたって耕作を行っていなかったおかげで腐植土がかなりの量たまっています。これはまさに大物ワインをつくるのに最適な条件が揃っているといえます。自然条件によりブドウの生長および収量が自然と低く抑えられるからです。
[2006年12月]
3. 植え付け
平坦な畑やおだやかな斜面であれば、通常は機械を使ってブドウの植え付けを容易に行うことができます。しかし、ハーレンベルクのような急斜面になると現在でも手作業で植え付けを行わなくてはなりません。また、そのためには特別な準備も必要になります。
まず最初に新しいブドウ畑全体の「棚決め」を行います。棚決めというのは、ブドウの列をどのように配置するか、また株間や列間隔を決めることです。私たちが決めた列間隔は1.90m、株間は1mです。
ここで重要なのは、列の予行方向に傾斜がないことです。横方向に傾斜があると、トラクターや今回の場合に使うようなザイルけん引式の作業機械が横滑りしてブドウの木に傷をつけてしまう恐れがあります。そのため、棚決めにあたっては後の農作業を予想して棚の方向を決めることが極めて重要となります。
棚決めが終わったら、今度は「シュティッケル」と呼ばれる杭を打ち込んでゆきます。もちろん作業はすべて人の手で行います。
このようにして約650本の支柱を畑全面に立てました。
続いて列ごとに針金をはって、いよいよ実際の植え付け作業に入ります。植え付け作業では地表に張った針金が、ブドウをきれいに一列に並べるための目印になります。
ブドウを植え付ける穴を掘る作業は男一人の仕事で、手持ちのドリルを使って汗だくになって掘った穴にブドウの株をさしてその上に耕土をかぶせます。
650本の杭をうち、3600株のブドウを植え付けるには、5人がかりでほぼ二週間かかりました。1日の作業が終わって庭のデッキチェアでくつろぎながら飲む一杯のリースリングゼクトが何よりの楽しみでした。
[2007年4月]
4. 針金を張り主枝を結びつける
植え付けから三週間ほどが経過すると、ほぼどの株にも若葉がつきます。そうなると成長は一気に加速してゆきます。
ブドウの苗からは新梢がひとつだけでなくいくつも伸びていきますので、早い時期の対処が必要です。一番勢いの良い枝だけを残してほかの枝は切り落とし、ブドウができるだけ速く上に向かって成長するようにします。もちろん主枝から伸びる副梢も取り除きます。(「芽かき」) このような枝落とし作業は回数が多いほどよく、ブドウの木がエネルギーを無駄に消耗することを防ぎ、芽を落とすことによって生じる傷も小さくてすみます。
まだ若い枝の成長は早く、すぐに支えなしではまっすぐに立っていることのできない長さになります。
そうなると枝を針金に結びつける時期です。その作業には一種の留め工具を使用し、薄いテープで枝を細い鋼鉄棒に留めてゆきます。(左上の写真)
しかしブドウの幹を支えるための棒もすぐに短くなってしまうので、伸びた枝を留められるように残りの針金も張っておかなくてはなりません。
棚ごとに五本の鉄線が必要で、一本ずつ手作業で張ってゆきます。(右上の写真) このブドウ畑全体では、なんと総延長20キロメートルもの鉄線を張ることになります。
[2007年6月]
5.
生育の促進
これからのブドウの成長は主に天候によって決まります。2007年の天候条件は申し分ありません。暑すぎなく、一定間隔で十分な降雨量があるからです。
その水分のおかげでまだ若いブドウはどんどん成長して背が高くなってゆきます。私たちも「自発的野生植物」(簡単に言えば雑草)を除去することでブドウの生長を助けます。
特にブドウのすぐ近くに生える雑草は、水分の取り合いになるので取り除く必要があります。

ハーレンベルクの眺め 奥に見えるのが新しい畑
成長中のブドウの最大の敵は、たびたびブドウ畑に入り込んではまだ小さい苗の芽を好んで食べてしまうウサギやシカです。
そのような動物を追い払うのには良い方法があります。毎週一度背負い式噴霧機を使って有機の葉面肥料を噴霧するのです。そうすると水を吸った肥料が数日後にすさまじい悪臭を放つようになります。
この方法はまさに一石二鳥です。ブドウは葉面から養分を吸ってさらに成長し、ウサギやシカはブドウに近寄らなくなります。100%天然の方法で効果も抜群というわけです。
今年もこの方法でとてもうまくいっています。新しく植えたブドウの95%はすでに1.50mの高さに達し、一部は2メートルを超えました。
[2007年8月]
6. 冬の休眠期
8月以来このコーナーに新しい記事が掲載されていないのは、私たちが更新をサボっていたわけではありません。この時期は新しいブドウ畑に何も手を入れずに休ませているからです。
唯一9月に行った作業は、激しい雨が降った時に土壌が流れてしまわないようにワラをしいたことぐらいです。天候に恵まれたこともあってブドウは今の時点でほとんどが2メートルを大きく超える長さになり、最高の状態で冬眠に入ることができます。
[2007年11月]
7. ブドウの剪定
春になってブドウの芽が出る前に剪定を行わなければなりません。樹齢の古いブドウの場合には剪定によって前の年についた枝の90パーセントを切り落とします。
植えてまだ一年目のブドウでは前年の枝は一本しかないので、切り落とす量はそれほど多くありません。ブドウの幹が十分な太さでしっかりしていれば、幹を残して切り落とすのが普通です。
しかし生育が良くない場合には、芽をひとつか二つだけ残して大胆に切ってしまいます。
私たちの畑のブドウはとても成長がよく、幹を一度横に曲げて鉄線に這わせることのできる大きさになっていました。これは、ブドウの丈を1.60mぐらいに切って、上の折曲用鉄線のところで幹を折り曲げ、下の折曲用鉄線に固定する作業です。
ブドウがこの状態になると、4月から5月にかけて芽が出始めたら間もなく新梢の数を減らさなくてはなりません。そうしないとブドウに負担がかかりすぎて、株自体が弱ってしまうからです。
[2008年2月]
8. 土壌耕耘と芽かき
ブドウの芽が出るのよりもずっと早く、必ず雑草が伸びてきます。そうなったら土壌耕耘をする時期です。土壌の耕耘には、斜面を登る時にはケーブルウィンチで引き上げ、下りの時には手で引く軽量の耕耘機を使います。
登る時には耕耘機の上に一人座って操縦し、もう一人がトラクターのケーブルウィンチを操作します。ただし、ブドウの株の中間に生える雑草は手かくわで除去しなくてはなりません。

萌芽して間もなく、新梢がまだ5センチから10センチの長さの時が、最初の芽かきをするのに適した時期です。
芽かきというのは、ブドウの幹と折り曲げた部分から余計な新梢を取り除くことをいいます。ひとつの株に残す新梢は、良い位置にあるものだけ、多くても6本に限っています。
そうすることで、残った新梢が力強く成長して、今年の秋に収穫するブドウに十分な栄養がまわるようになるのです。
[2008年4月/5月]

萌芽して間もなく、新梢がまだ5センチから10センチの長さの時が、最初の芽かきをするのに適した時期です。芽かきというのは、ブドウの幹と折り曲げた部分から余計な新梢を取り除くことをいいます。ひとつの株に残す新梢は、良い位置にあるものだけ、多くても6本に限っています。そうすることで、残った新梢が力強く成長して、今年の秋に収穫するブドウに十分な栄養がまわるようになるのです。
[2008年4月/5月]
9. 新梢の剪定と矯正
この夏は比較的雨量が少なかったですが、ブドウは今年もよく成長しています。いくつかの勢いが弱い株についてのみ、新梢の数をさらに減らして結実した房を除去しました。勢いのある株は結実したブドウをほぼそのまま残してあります。少量ですが今年2008年にもいくらかの収穫が見込めそうで、この畑で収穫したブドウは他のブドウとは分けてワインを作る予定です。
新梢が伸びてくると、ワイヤによって枝を支えてやらなければなりません。リースリング種のブドウはツタの先がしっかりとワイヤに巻きつきますが、そのためには主枝が垂直に伸びていなければなりません。そのため、枝留め用ワイヤとツタ先の絡むワイヤの中間にある主枝を固定してやる必要があるのです。この作業を枝留めといいます。もうしばらくするとブドウは壁のように高くなり、刈込鋏か鎌で刈り込む必要がでてきます。余分な歯や枝を切り落とすことで枝が折れることを防ぎ、ブドウのなる部分の風通しが良くなって、ブドウの実の健康状態に良い効果をもたらします。
[2008年6月/7月]

10月初めにはブドウの葉が色づき始める
10. ブドウの収穫
ようやくこの時がやってきました。ブドウが成熟したのです。ほとんどのブドウは小粒となったため、非常に良好な状態です。ブドウの垣根から黄金色に輝くブドウが顔を覗かせています。ここかしこに貴腐と呼ばれるボトリティス菌もついています。この菌がつくとブドウの皮が薄くなって実の中の水分が蒸発しやすくなるのです。そして実の中には主に糖分と酸、高度に濃縮された味と香りが残ります。
10月22日に当蔵の2007年プロジェクトの成果である初めてのブドウを収穫することができました。その品質と収量は実に満足のゆくものでした。この畑でとれたブドウから搾ったモストは、いずれにしてもほかのワインとは分別して醸造し、来春に新酒を試飲するときにこの新しい畑の特徴を少しでもつかみたいと思います。最終的にこの畑のワインを特定畑ワインとして瓶詰めする可能性もあります。どうなるか様子を見てみましょう。
[2008年10月]
あとがき
マルチング用の機械で雑木を除去しこの畑を作ってからおよそ2年が経過しました。思えばあっというまの出来事でした。新しいブドウ畑にはしばしば特別な手入れや作業が必要となりましたが、かといって既存の畑のことを疎かにすることは許されません。
新しい畑の作業をこのページで順次紹介してきました。今後は私たちが「young Lay」と呼んでいるこの畑も、傾斜のきつい他の畑とほぼ同じように扱うことになりますが、一つだけ違うのは、このあと数年は収量を抑えることでまだ若いブドウの株への負担が大きくなり過ぎないように注意する必要があるという点です。古株のブドウであれば、収量は自然に調整することができます。
実は今年私たちはまた新しいプロジェクトを開始しています。2008年のプロジェクトではまた、30年以上も使われていなかった部分を含む約1.2ヘクタールのブドウ畑を再生します。
2区画の新しいブドウ畑はハーレンベルクのすぐ上に位置しています。傾斜40~50%というのは私たちの感覚ではまだ極端な急傾斜とはいえませんが、二三年後には安定して高い品質を得ることのできる畑になり、私たちの栽培するミネラリティ志向のリースリングにうまく合うのではないかと期待しています。その成果を皆さんにもご自分の目でご確認いただけるようこれからも努力して参ります。
[フランク・シェーンレーバー]

新しいブドウ畑:白-2007年 赤-2008年